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広島高等裁判所 昭和42年(ネ)258号 判決 1967年11月09日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、本件口頭弁論期日に出頭しないが、その陳述したものとみなされる控訴状の記載によれば、「原判決を取り消す。宮内発は控訴人の子であることを確認する。」との判決を求め、被控訴人は主文第一項と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、原判決事実摘示と同一である(但し原判決請求原因三項中「昭和一九年七月一日」とあるを、「昭和一九年七月一八日」と訂正する。)から、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所も控訴人の本訴請求を不適法な訴として却下すべきものと判断した。その理由は次のとおりである。

控訴人の本訴請求は、宮内発(昭和一九年七月一八日死亡)は控訴人と訴外原田証円との間に生まれた子であるところ、戸籍上宮内団之助と同チカの間の嫡出の長男として記載されているが、右は真実に反する戸籍であるから、発が控訴人の子であることの確認を求める、というにある。

控訴人と発との母子関係は本来出生によつて当然発生するものであるが、その出生届出の妨げとなる戸籍の訂正をするには、控訴人としては、前記団之助チカ及び発を相手方として右三者間の親子関係の不存在確認の判決を求める必要があるところ、発が既に死亡していることは控訴人の自認するところであつて、控訴人は本訴において、検察官を相手方として、発が控訴人の子であることの確認を求めているのである。しかし、右は過去の法律関係の確認を求める不適法な訴であり、また、人事訴訟手続法第二条第三項を類推適用して、検察官を相手方として右確認訴訟を提起することは許されない(同条項は身分関係の遡及的な変更を目的とする訴につき特別に明文化したものである。最高裁昭和三四年五月一二日第三小法廷判決、民集一三巻五号五七七頁参照)。

そうすると、控訴人の本件訴は不適法として却下すべきものであるから、これと同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は、理由がないので、棄却を免れない。

よつて、民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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